研究紹介

大気環境の現状


私たちが暮らしている地表付近の大気(対流圏)の問題としては

1. オキシダント(オゾン)の増加
2. 環境の酸性化(酸性雨など)
3. 温室効果気体の増加

などがあります。これらの現象の解明を行い精緻な将来予測を提供していくことが我々の研究の最終目的です。例えば、成層圏のオゾンは減少しており大きな社会問題として取り上げられていますが、対流圏では逆にオゾンが増えていることが問題となっています。オゾンは毒性が高いので人体や植生に大きなダメージを与えます。またそれ自体が温室効果気体です。オゾンの増加は人間活動による窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素や炭 化水素類の増加が原因と考えられています。これらの化学物質が大気中で太陽光による光化学反応を引き起こし、それによってオゾンが生成してくると考えられていますが、詳しいメカニズムを調べるためにはこれらの反応の中間体であるラジカルなどの大気中での濃度を実測する必要があります。

 私たちの研究室では、従来の方法では測定が困難な物質(反応中間体やごく微量な気体)について、レーザー分光法や質量分析法を用いた新たな測定装置の開発を行なっています。また、東アジア域の様々な地域でオゾン、一酸化炭素、反応性炭化水素などの長期観測を行なっており、その観測データを用いて東アジアの大気質の変動について詳しく調べています。以下に、現在の研究内容の一部を紹介します。


1.都市域における大気光化学反応の検討

私たちが普段呼吸する都市の大気には自動車や工場からの排気による高濃度の汚染物質(NOx, SO2, 炭化水素など)が存在します。これら直接大気中に排出されるものとこれらの物質から大気中で反応して出来てくるもの(オゾンやエアロゾル)も存在します。大都市域での大気汚染の研究ではこれらの物質の総合的な研究を通して効率の良い削減を行うための科学的な基礎研究を行っています。
このため、大気環境に関する新しい情報が得られる様々な装置の開発をしてきました。

1) OH反応性測定装置
大気試料中に反応性の高いOHラジカルを添加し、そのOHラジカルの反応速度から大気中の反応性の高い微量成分の量を測定する装置です。オゾンが生成される反応の初期段階の情報から、取り込んだ実大気がどの程度オゾンを生成するかがわかります。

2) 化学増幅法による過酸化ラジカル測定装置
ラジカル種は生成速度も消失速度も速いため大気中での濃度は非常に低く(体積混合比で1兆分の1程度)、直接観測することは困難です。そこで、高濃度の一酸化炭素と一酸化窒素を曝露し、200倍程度の濃度の二酸化窒素に化学的に増幅します。増幅された二酸化窒素をレーザー誘起蛍光法で測定することにより、時間分解能の良い高精度なラジカル種の濃度測定が可能となります。


3) NOx-LIF法によるオゾン生成能測定装置

大気試料にOHラジカルを添加し、大気中で起こる化学反応を進行させます。最終的に生成されるNO2の量から実大気中でどの程度オゾンが生成するかについて情報を得ます。

4) 長光路高感度光吸収法による高時間分解能度測定装置
二枚のミラーの間に光を閉じ込めることで非常に長い光路長が作り出せます。この長い光路長を利用して大気中にわずかしか存在しない分子の濃度についても正確に測定する装置です。




5) フーリエ変換型赤外分光分析
大気中にある様々な分子種は分子の振動、回転、並進エネルギーに相当する赤外光を吸収します。吸収される光の波長は分子を構成する原子の種類や結合状態などによるため、光の吸収波長・吸収強度はその物質固有のものとなります。Lambert-Beerの法則により、FT-IR分光光度計を用いて測定した吸光度から試料大気中の目的物質の定性・定量ができます。





2.大気中のオゾン、一酸化炭素、炭化水素の測定


東アジア・東南アジア地域における大気環境の長期間測定をしています。これまで、北海道母子里、長野県八方、島根県隠岐、沖縄県辺戸岬での地表観測や、観測船「みらい」による日本近海での洋上観測を実施しました。また、タイ・バングラディッシュなどでも観測をしてきました。




野外観測リンクなど

2014年冬の国立環境研究所大気観測(2015/2/9-2/22予定)
2014年秋の国立環境研究所大気観測(2014/11/4-11/17予定)
2014年京都大学和歌山研究林大気観測(2014/7/28-8/10)
2014年春の国立環境研究所大気観測(2014/5/12-5/25)
2013年京都大学大気観測キャンペーン
2013年FM-多摩丘陵観測(AQUAS TAMA 2013)
2012年FM-多摩丘陵観測(AQUAS TAMA 2012)